「何かを生産する仕事」を求めて北海道へ
お金で物を買って消費するだけの毎日に物足りなさを感じ「何かを生産する仕事がしたい」と思い立ったのがきっかけで一念発起、大学卒業後3年間勤めた職場を退職して、本州の東北から北海道の雄武町へやってきました。
デスクワークから肉体労働への突然の転向ということで家族や当時の同僚にはとても心配されましたが、農協職員さんや受入先農家の方々の細やかな気配りのお陰でこれまで特に大きな怪我や病気等も無く、健康に過ごすことが出来ております。
実習は早朝5時から育成牛舎の除糞、草やり、それが終わると搾乳が3時間ほどあり、一連の作業が夕刻にも……。私は1軒目の実習が終了すると同時にその農家さんの従業員として正式に雇って頂くことが決まり現在に至っていますが、ある程度仕事に慣れた今でも子牛たちのパワーと母牛たちの貫録には毎日圧倒されています。
生き物を扱う責任の重さを痛感
牛は犬や猫と比べて表情から喜怒哀楽が読み取りづらいのが、酪農を初めて一番戸惑ったことでした。それでも月日を共にするうち、どれも同じように見えていた牛たちにも、人懐っこいもの、気性が荒いもの、のんびりしていて人が近付いても微動だにしないもの等、それぞれ個性があることに気が付きました。
酪農は重労働です。誰しもが続けられる仕事ではありません。いくつかある受入先農家さんはそれぞれ規模が異なりますが、どこにお世話になるにしても、生き物を扱う以上は相応の責任感や忍耐力が求められることを覚悟しなければなりません。
私たち人間が「休みたい、逃げ出したい」と思っている間にも、牛が成長し、妊娠し、子を産み、乳を出すサイクルは容赦なく繰り返されます。実習生の中にはごく稀ながら体力の限界に達し数週間で寮を出てしまう人もいます。だけどそれだけに、最初の3ヶ月を乗り越えると精神的にも肉体的にもたくましくなっている自分に気付くはずです。
助け合いの精神が根付く農業
私は酪農実習で牛の一生を目の当たりにしたことにより、牛乳が出荷されるまでの苦労を肌で実感することが出来ました。猛暑や酷寒、過酷な自然を克服しながらひたすら牛を育て、乳を搾っている人たちがいる――どれも店頭に並んだ牛乳を買って飲んでいるだけの生活では想像すらしなかった事ばかりです。
慣れるまでは辛いかもしれませんが、農協の担当職員さんも受入先農家の方々も、困った事があればいつでも親身に相談に乗ってくださるので心配は要りません。仕事が大変な分、皆で助け合う精神が根付いているのが農業ならではの魅力だと思います。
雄大な自然の中で感じる「働き甲斐」
雄武町にはショッピングモールも映画館もありませんが、国道238号線沿いに広がるオホーツク海の様々な表情と草地でのんびり草を食む牛たちの姿は、少々の不便を補って余りあるほどの絶景です。
澄んだ空気の中、一日の仕事を終えた達成感に包まれて見上げる星空もまた格別で、どんなに疲れていても「明日も牛たちに会いに行こう!」という元気が湧いてくるはずですよ☆彡